学校安全推進センター -大阪教育大学-
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トラウマインフォームドケア(Trauma-Informed Care:TIC)とは

 トラウマインフォームドケア(TIC)とは、支援する多くの人たちがトラウマに関する知識や対応を身につけ、普段支援している人たちに「トラウマがあるかもしれない」という観点をもって対応する支援の枠組みです。
 このTICという考え方は、2000年代以降、北米を中心に広がりを見せ、近年日本においても、医療、福祉、司法、教育の領域にも適応されるようになってきています。
 TICの考え方が出てきた背景の一つには、1990年代後半から行われるようになった小児期逆境体験(Adverse Child Experiences:ACE)研究の知見があります。
 これらの研究で、予想以上に多くの人が虐待や家族機能不全といった逆境体験を被っているだけではなく、逆境体験を重ねれば重ねるほど行動面、心理面、健康面のリスクが高まることが明らかにされました。
 逆境体験がすべてトラウマになるとは限りませんが、トラウマを理解して対応していくことの必要性が認識されるようになりました。

  • SAMHSAのトラウマ概念とトラウマインフォームドアプローチのための手引き

     北米のTICを推進している米国保健福祉省薬物乱用精神保健管理局(SAMHSA)が作成した手引きです。
     TICの歴史的経緯や主要な原理などTICの基本が概説されています。


    当センターと兵庫県こころのケアセンターにより翻訳
  • 「困った人は、困っている人」(A4版)

     困った人、障害をもっている人などに対してトラウマの理解を深めることが優しい社会づくりにつながることを目的に作成したパンフレットです。
     支援者として知っておきたいトラウマの視点について説明しています。

    JST-RISTEX プロジェクト「トラウマへの気づきを高める"人・地域・社会"によるケアシステムの構築」により作成

トラウマインフォームドな学校

 トラウマインフォームドな学校(トラウマに配慮した学校)とは、TICの考え方を学校教育領域に適用したものです。
 子どもだけでなく教職員にとっても、安全で安心な環境を育成していくことが欠かせません。
 その際の留意点について、次の資料を参考にしてください。

  • 「トラウマインフォームドな学校づくりー支援を継続させるシステムフレームワーク」

     米国国立子どもトラウマティックストレス・ネットワーク(NCTSN)により作成された資料を当センターにて翻訳しました。
     トラウマインフォームドな学校が必要な理由、トラウマインフォームドな学校に欠かせない構成要素や枠組みなどトラウマインフォームドな学校の基本的な考え方について解説されています。

  • 問題行動の背景をトラウマの視点から考えてみよう

     学校における子どもの行動の背景について、じっくり考える際に役に立つリーフレットです。
     学校場面でよくみられる、トラウマの影響から生じる行動やその対応について、分かりやすく、簡潔に説明されています。


    JST-RISTEX プロジェクト「トラウマへの気づきを高める"人・地域・社会"によるケアシステムの構築」により作成

子どもへの対応(学校関係者向け)

 トラウマインフォームドケアでは、トラウマとなる体験を再び経験しないための予防的な観点や対応が中心となりますが、危機的な出来事が生じた際に対応する際には、次のような手引きやリーフレットが役に立ちます。

  • サイコロジカル・ファーストエイド学校版(PFA-S)実施の手引き

     米国国立子どもトラウマティックストレス・ネットワーク(NCTSN)により作成された手引きです。
     PFA-Sは、トラウマとなる出来事がおきた直後に子どもや家族、学校の教職員や学校関係者を支援する上で役に立ちます。
     出来事により引き起こされた初期の苦痛の軽減、短期・長期の適応機能と対処行動を促進させる方法が解説されています。


    平成27-29年度 JSPS 科研費 15K17323により翻訳

  • 教師のための学校危機後の5つのポイント~心理教育とサポート~

     米国教育省が発行した小冊子「学校危機管理のための有益なヒント」(2008 年)をもとに、日本の学校の体制や危機後の状況にあわせて使えるよう、当センターによって再編したものです。
     学校危機後の対応の5つのポイント(「ていねいな聞き取り」「安全な場づくり」「安心できるつながり」「乗り越え方を示す」「心理教育」)について、解説しています。


子どもの心理教育用資料

 トラウマとなる出来事の後、子ども、養育者、教職員等が出来事の影響を理解し、子どもが安心感を取り戻し回復していくための対応等が説明されている心理教育用のリーフレット、絵本、通信を紹介します。

  • 教職員向け知っておいてほしい トラウマケア 子どもへの対応の基本①

    子どものトラウマとそれに対する対応について先生に知っておいてほしいこと、こころのケアのためにできることをまとめたものです。

  • 教職員向け知っておいてほしい グリーフケア 子どもへの対応の基本②

    子どものグリーフについて先生に知っておいてほしいこと、こころのケアのためにできることをまとめたものです。

  • 保護者向け知っておいてほしい トラウマケア 子どもへのかかわり方

    子どものトラウマとそれに対する対応について保護者の方に知っておいてほしいこと、こころのケアのためにできることをまとめたものです。

  • 保護者向けこころとからだのケア~こころが傷ついたときのために

     保護者が子どもと一緒に眺めながらトラウマへの理解を深める冊子です。

    (1.67MB)
    平成22 年度厚生労働科学研究費補助金により作成
    第2 版国立成育医療研究センターこころの診療部 発行

  • 子ども向けもうすぐうんどうかい(子どもへの心理教育用絵本)

     大きな出来事により大きな影響を受けた「クマくん」が周囲のあたたかいサポートを受けながら、回復していく過程が描かれている心理教育用の絵本です。
     低学年のお子さんでも理解しやすい内容です。


  • 子ども向け子ども向け心理教育用絵本の活用方法

     「もうすぐうんどうかい(子どもへの心理教育用絵本)」の活用方法について説明しています。

  • 子ども向け 大きなできごとがあった後に"あたりまえのこと"編 (中高生版)

     東日本大震災の際に作成した中高生向けのプリントです。
     4コマ漫画が入っており、読みやすい内容となっています。

  • 子ども向け 子どもの心理教育に役立つ絵本

    子どもの心理教育に役に立つ絵本で、書店などで入手できるものをご案内します。

    絵本に関する情報(兵庫県こころのケアセンター)

子どもへのケア(専門家向け)

子どものトラウマについて

  • 子どものトラウマ診察ガイドライン

     小児科や内科、精神科の先生方や精神福祉領域に携わっておられる専門職の方々が臨床場面で子ども(小学生年齢以上)を診るうえで役に立つガイドラインです。
    ※ 最新の第3版は、下記のリンク先より入手できます。

    https://www.j-hits.org/document/child/page1.html
    平成22年度厚生労働科学研究費補助金により作成
    第3版国立成育医療研究センターこころの診療部 発行

トラウマに焦点化した心理療法

  • 子どものこころのケアプログラムのご案内

    TF-CBT を導入する前に、子どもと保護者に説明する際の分かりやすいリーフレットです。


    平成24 年度厚生労働科学研究費補助金により作成

  • TF-CBT(トラウマフォーカスト認知行動療法)実施の手引き

     米国国立子どもトラウマティックストレス・ネットワーク(NCTSN)により作成された手引きです。
     TF-CBTとは子どものトラウマに焦点化した認知行動療法の一つで、非常に効果が高いと考えられています。
     この冊子は、TF-CBT実施のための手引書になります。
     TF-CBTの実施を検討している専門機関や臨床家がご利用いただけます。


    平成24年度厚生労働科学研究費補助金により翻訳

  • あなただけの大切なTF-CBTワークブック第2版

     TF-CBTの治療構成要素に対応したワークブックです。
     実際の治療では、子どもの状態に合わせて柔軟に利用されます。
     プログラムマニュアルを熟読し、TF-CBTの研修を受けた精神保健の専門家の方がお使いいただけます。


    平成24年度厚生労働科学研究費補助金により翻訳

  • 安全な親子になるためのプログラムのご案内(CPC―CBT 親子複合型認知行動療法)

     CPC-CBT(親子複合型認知行動療法)のプログラムについて、わかりやすく説明されたリーフレットです。
     プログラム実施前、親子に説明する際に使用していただけます。


    令和4年度、大阪教育大学学校安全推進センター、兵庫県こころのケアセンター、大阪府子ども家庭センターにより作成

子どもの心的外傷性悲嘆

 大切な人やものを喪うと子どもの心や体にも情緒的な反応が現れます(悲嘆反応)。
 とりわけ、トラウマが生じるような状況下で大切な人を喪うと通常の悲嘆反応だけではない深刻な反応(心
的外傷性悲嘆)が生じることがあります。

  • 思い出す勇気 子どもの心的外傷性悲嘆のためのガイド

     米国国立子どものトラウマティックストレス・ネットワークの「子どもの心的外傷性悲嘆に関するワーキンググループ」によって作成された子どもの心的外傷性悲嘆に関する専門家向のトレーニング用教材です。
     子どもの心的外傷性悲嘆への理解を深めるためのガイドです。


    平成26年度厚生労働科学研究費補助金により翻訳

  • 思い出しても大丈夫

     「思い出す勇気 子どもの心的外傷性悲嘆のためのガイド」を導入する際のビデオです。
     これは、トラウマが生じるような状況下で大切な人を喪った子どもにかかわる専門家や教師、保護者などすべての大人が子どもについて理解を深めるうえで役に立ちます。

    当センターと兵庫県こころのケアセンターにより日本語吹き替え版作成

  • 思い出す勇気 教育用ビデオ

     「思い出す勇気 子どもの心的外傷性悲嘆のためのガイド」の理解を促進するための教育用ビデオです。

    ビデオに関する情報(兵庫県こころのケアセンター)
    兵庫県こころのケアセンターと当センターにより日本語字幕作成

  • 冊子や手引きなどの著作権は保護されています。コピー又は電子媒体による再頒布は自由ですが、内容の改変はできません。本冊子の使用や、内容の引用に際しては、引用元をかならず明記してください。許可なく商業活動において使用することは禁じます。

関連する論文・出版物など

 TICへの理解を深めるための論文や出版物などです。

  • 瀧野揚三. サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)とその活用のために. 日本保健医療行動科学会年報. 27, 105-114, 2012.
  • 中村有吾・瀧野揚三. トラウマインフォームドケアにおけるケアの概念と実際. 学校危機とメンタルケア. 7, 69-83, 2015.
  • 中村有吾・木村有里・瀧野揚三・岩切昌宏・一谷紘永. 教育分野におけるトラウマインフォームドケアの概念と展開. 学校危機とメンタルケア. 9, 103-117, 2017.
  • 亀岡智美・瀧野揚三・野坂祐子・岩切昌宏・中村有吾・加藤寛. トラウマインフォームドケアーその歴史的展望―. 精神神経学雑誌. 120(3), 173-185, 2018.
  • 中村有吾・瀧野揚三・岩切昌宏. 米国マサチューセッツ州におけるトラウマセンシティブスクールの実際. 学校危機とメンタルケア. 11, 1-14, 2019.
  • 中村有吾・岩切昌宏. トラウマセンシティブスクールー全児童生徒の安心感を高めるアプローチ. 精神医学. 61(10), 1143-1149, 2019.
  • 浅井鈴子・岩切昌宏・大岡由佳・瀧野揚三・中村有吾・毎原敏郎. 学校におけるトラウマインフォームドケアの実践(第1報)-中学校への介入研究の結果から-学校危機とメンタルケア. 12, 25-31, 2020.
  • 大岡由佳・岩切昌宏・浅井鈴子・瀧野揚三・毎原敏郎・木村有里. 学校におけるトラウマインフォームドケアの実践(第2報)-X 市の教員全体を対象にした性被害・性加害研修の結果から-学校危機とメンタルケア. 12, 33-44, 2020.
  • 内海千種・中村有吾. トラウマに配慮した学校作り. 学校トラウマの実際と対応-児童・生徒への支援と理解-(藤森和美編著). 誠信書房. 15-34, 2020.
  • 岩切昌宏. 未然防止, 被害児童生徒の心のケア, 性問題行動を起こす児童生徒への対応. 学校で性暴力被害がおこったら-被害・加害児童生徒が同じ学校に在籍している場合の危機対応手引き. 「トラウマへの気づきを高める"人-地域―社会"によるケアシステムの構築」. JST-RISTEX, 5, 10-13, 2020.
  • 中村有吾. トラウマセンシティブスクールの枠組みと取り組み. 亀岡智美(編)実践トラウマインフォームドケア‐さまざまな領域での展開-. 日本評論社. 147-160, 2022.
  • 大岡由佳. トラウマインフォームドサポートブック. 中央法規. 2023.
  • 中村有吾. 気になる!教育関連用語解説-トラウマ-. 教職研修2023年6月号. 教育開発研究所. 69, 2023.